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2006年06月09日

●[ばくちのち 7]馬券の買えない青年 後編

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いよいよ発走となっても、大井競馬場は大混雑というわけではない。オッサン、会社帰りのサラリーマン、ときどきカップル。これぐらいの混み具合で大レースが見られるというのが、何ともありがたい。

ファンファーレが鳴り響く。今年は地方競馬協会が「ダービーウィーク」と称して、今週に日本各地で「ダービー」と名の付くレースをやっているようで、新しい旋律である。歓声に続いて、馬が次々とゲートに入ってゆく。最後に大外枠の16番サンキューウィンが入って完了。ゲートが開き、歓声が夜空にとどろく!第52回、東京ダービーが始まった。

馬はコースをぐるっと1周する。スタート地点から直線、我々の目の前を16頭が駆け抜けてゆく。ドドドッ、ドドドッという足音、そして拍手。その後に吹く赤茶けた砂ぼこり、それは風に乗って夜空へと舞い上がる。月が見える。

レースはサンキューウィンの逃げで始まった。快調に先頭を走る。1番人気シャイニールックは4番手、「佐々木の予想」が対抗馬に推したトキノシャンハイは後方から5頭目、そのさらに後ろに私の夢、サワライチバン。あれ、逃げ馬じゃなかったっけ?

いろんな人の夢を乗せて走る16頭、あっという間に最後のコーナーを回り、ゴール前の直線に戻ってくる。と、同時にスタンド全体から響きわたる、声とも何ともつかない怒号。サンキューウィンはまだ逃げるが、そこに並びかけるシャイニールック、しかし並びそうでなかなか届かない。これは逃げ切りか?と思わせたところで外から追い込んで来たのが山田騎手のトキノシャンハイ!佐々木の予想、田倉さんの夢が勝つのか?外からは何も来ない、これは決まったか、

に見えたところで内から芦毛の馬がスルスルとサンキューウィン、シャイニールックを交わす!あれは何だ?私は目を疑う。「ビービートルネード!ビービートルネード!」実況アナが叫ぶ。「町田!」私も思わず叫ぶ。一度は勝ったかと思ったトキノシャンハイを内側から差し切ったところがゴール。町田直希騎手が高々とガッツポーズ。「マチダナオキです!」実況に場内は騒然。それもそのはず、町田騎手は去年デビューしたばかりの新人なのだ。

私ははずれた馬券のことなど忘れて、しばし呆然としていた。ウィニングラン(大きなレースのときは、勝ってからコースをもう1周するのだ)では、一時は騒然としていた場内からも暖かい拍手、そして「ナオキ!」という声が飛ぶ。初々しい町田騎手はファンに終始頭を下げている。私も「おめでとう!」と声をかけた。1988年生まれの18歳、馬券の買えない青年が、大きな勲章を手にした瞬間だった。
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▲表彰式  詳しいレース結果、映像はこちら

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