●[雑談14]やはり、その一球がドラマ
ぼくは基本的に「流れ」というものを信じていない。けれども、「流れ」の存在を信じる人々が集結したとき、それがある種のエネルギーとして目に見えるものとなることは、否定できないと思う。特に、高校野球という舞台においては。
先週の日曜、神奈川県大会の決勝を横浜スタジアムで観戦した。昨年の奈良県大会に続いて2度目の県大会決勝である。甲子園出場チームの数だけ、あと1勝で涙を飲むチームがいるのだ。
カードは東海大相模vs桐光学園。横浜と慶應という強豪校をそれぞれが破っての決勝進出である。ほかにも桐蔭学園や日大藤沢といったチームがあるわけで、さすが神奈川、194チームあるだけのことはある。しかし、2000年春センバツ優勝など、甲子園の常連かと思われがちな東海大相模、実は勝てば30年ぶりの夏なのである。対する桐光は2002年と2005年に出場、勝てば2年ぶり3回目となる。
試合は一進一退の攻防、追いついて逆転、また逆転という凄まじい展開となった。5回を終わって4-6、6回表に桐光が1点差に詰め寄り5-6。しかし6回裏、ある「流れ」が生まれた。
桐光が詰め寄ったものの、東海大相模は再び点差を開き5-7。さらに1人ランナーを置いて、センターの頭上を破るタイムリーヒットで5-8。センターはバックしていったものの、ボールは外野フェンスに当たり大きくバウンド、ボールは逆にセカンドベース側へと転がる。打った相模のランナーはサードベースを蹴る! ここで桐光も捕球してバックホーム! クロスプレーに観客全員が息をのむ。
「アウト!」主審の手が空に突き上がり、桐光スタンドから大歓声が沸き上がる。しかし、キャッチャー奥野が動かない。クロスプレーで負傷したのだ。「よくやった」と言わんばかりの拍手の中、両肩を担がれベンチへ帰る奥野。
冷静に考えれば1点差に詰め寄られたのを3点差に突き放したイニングで、勝負あった、となってもおかしくない。しかし、勝負は逆の意味で、もうついていた。7回、連打でノーアウト1,3塁とされた東海大相模のエース菅野に、もはや力はなかった。いや、桐光が作った「流れ」が、彼の力を奪った。2点タイムリーに犠牲フライで8-8の同点。そして9回表、2アウトからの連打で桐光が2点勝ち越し。9回裏はノーアウトのランナーを出したものの、ピッチャー菅野三振のあと、ファーストライナーがダブルプレー。あっけなく幕が下りた。
桐光022001302/10
相模203102000/8
桐光学園は2年ぶり3回目の出場
東海大相模の夏は、今年も甲子園の土を踏むことなく終わった。しかし、選挙という大人の「戦い」の裏で繰り広げられた、高校生の「戦い」は、ハマスタにいた誰もが忘れない。
あと一票あと一球と蝉の鳴く 修司

